技術・トレンド
新しい商品の製品化、新規事業開発などに欠かせない消費者分析。マーケティングにおいては、年齢、性別、職業はもちろん、家族構成や趣味などのライフスタイルまで深く掘り下げ、ユーザーの人物像を掘り下げる重要な工程であるのだが、従来の調査・分析方法では時間やコストがかかる大変な作業であった。この課題を生成AIの力で解決しようというのが、「ペルソナ行動研究所」だ。“日本初”生成AIで消費者の行動を深く探るシステム「ユーザープロ」を独自開発したレイ・フロンティア取締役CTO,Founderの大柿徹に、本サービスを開発した経緯と将来性について語ってもらった。
「ペルソナ行動研究所」は消費者の行動を深く探る「ユーザープロ」を独自開発した。
従来の分析方法とは一線を画すのは、スマートフォンの情報を利用している点である。「当社ではスマートフォンから得られるセンサー情報(GPS、加速度、ジャイロ等の非言語データ、無意識データ)から各種推定情報を統計処理、機械学習処理により言語化可能データを各種整備しております。またSilentLogAnalyticsという可視化ツールも開発し、分析に使えるプラットフォーム開発をおこなってきました。当社がこれまで実施してきた推定データや分析データをLLM(※Large language Models)を用いて、解釈しやすい形に変換し提供することで、より深い消費者N=1の分析ができることが研究からわかってきたのです(図1)」(大柿)
※大規模言語モデル 大量のデータとディープラーニングで構成された言語モデル。
例えば、「毎月1度は美術館を訪れることを趣味にしている人物」の分析をしたい場合。「ユーザープロ」のシステムがスマートフォンのGPS情報を収集し、「月に1回、美術館を訪れる」ユーザーを抽出。性別、年齢、職業、年収、趣味や行動パターンまで、分析をしてくれるというのだ。
ただ、グラフやマッピングデータなどの結果だけを載せた“生の分析データ”を手に入れても、取り扱いに困るという担当者も多いことだろう。この悩みを「ユーザープロ」ではLLMを活用することで解決している。
「昨今のLLMの進化に伴い、言語化や言語ベースでの解釈が飛躍的に扱いやすくなってきました。データ分析に長けていない人でも図2のように仮想ユーザー(AI)に質問し、受け答えしてもらうことで、ペルソナの構築が可能となるのです」(大柿)
今後の展望についても教えてもらった。
「現状、ペルソナとして出力したものは今現在のスナップショットであり、1か月後、1年後に変化するものだと思われます。ただ、ペルソナを定期的・累積的に記録することは容易にできるため、今後これら累積情報を経年変化・特徴として捉えて分析に活用できれば、データ利用の幅が増えるのではないかと考えています。企業のマーケティング担当者だけではなく、都市開発、防災、交通などに課題をもつ自治体や不動産・建築業などさまざまな業界でのデータ分析にご活用いただきたいです」(大柿)
技術の革新は新たなライフスタイルを生み出す。個人のライフスタイルが多様化していくなかで、ニーズにフィットしたサービスを届けるには、個の研究(消費者N=1の分析)の重要度がいっそう増してくる。
「例えば、将来の自動運転が普及した世界を想像してみましょう。車内は移動するためだけの空間にとどまらず、人がより人らしくくつろげる空間になるのではないかと思います。屋外でありながらプライベートな“日常と非日常の境界的な空間”となるのです。この例以外にも、技術の革新によって新たな価値を持った空間は創り出されることでしょう。『ペルソナ行動研究所』のような技術で『人がいまどのような状態であるのか』を詳細に知ることができれば、どのような時代にもフィットする多様なサービス提供が可能だと思います」(大柿)
レイ・フロンティア取締役 CTO, Founder大柿徹